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生活と仕事を守るお金から、将来の積立へ。知りたい項目を選んで、制度・税金・リスクを確かめましょう。
エアコン屋として仕事を続けながら、今の生活と将来のお金を守るためのガイドです。最初に現金の備えを確保し、必要な保険を確認したうえで、NISA・iDeCo・小規模企業共済を目的に合わせて考えます。
すべてを一度に始める必要はありません。気になる項目から読めるよう、制度選び、税金、借入れ、投資のリスク、証券口座を分けました。
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CHAPTER 01 / 現金と保険
積み立てる前に、生活と仕事のお金を確保する
繁忙期に売上が増えても、口座にあるお金を全部使えるわけではありません。洗剤や消耗品、車の維持費、保険料、税金。少し先に出ていくお金もあります。
投資に回す金額を決める前に、次のお金を分けて考えます。
- 生活費:家賃や住宅ローン、食費、光熱費など。
- 仕事を続けるお金:車、道具、洗剤、外注費、広告費など。売上の入金までに必要な支払いも含みます。
- 税金や社会保険料、予定している大きな支出:納付時期や車の買い替えなどが決まっているお金。
- 急な休業や売上減に備えるお金:ケガや病気、閑散期、道具の故障があっても生活と仕事を維持するための預貯金。
必要な備えは、家族構成、毎月の固定費、収入の波、保険の内容で変わります。「何か月分あれば全員安心」とは決められません。まずは、仕事を休んだら毎月いくら必要なのかを出してみてください。
そこまで確保して残る、当面使う予定のないお金が、投資を考えられる余裕資金です。今は余裕がなければ、現金の積み立てから始めるので十分です。備えを確認したい方は、エアコン屋に必要な保険を整理した記事も参考にしてください。
積立と一緒に、事故・休業への備えも確認する
貯蓄や老後の積立を続けるには、仕事を休んだときにも家計と事業が回ることが大切です。保険を増やす前に、手元の預貯金、公的な保障、現在の保険で足りる部分を確認しましょう。ここでは、清掃業で確認したい備えを5つに分けます。
1. お客様の物を壊したとき:仕事の賠償責任保険
お客様の家や店舗で作業する人は、まず補償範囲を確認。洗っているエアコン本体は「作業対象物」、預かった部品などは「受託物」として扱われることがあります。壁や家具への損害と、これらの物の破損が同じ条件で補償されるとは限りません。作業後の漏水も含め、具体的な事故例で対象・対象外を確認します。
見る項目は、支払限度額、免責金額(自己負担額)、対象外の事故、必要な特約(補償を追加・変更する約束)です。たとえば東京海上日動の公式案内でも、作業中・作業完了後・管理している物の補償は分かれています。加入済みでも、実際の契約内容を照合してください。
2. 自分が仕事中にケガをしたとき:労災保険の特別加入
脚立作業や現場への移動がある人は、自分自身の補償を確認。特別加入は、一定の条件を満たす事業主やフリーランスが労災保険に任意で入る仕組みです。認められた業務中・通勤中の災害に備えます。
2024年11月からは、企業等から業務委託を受けるフリーランスも対象が広がりました。消費者からの依頼だけで、この区分に誰でも入れるわけではありません。家事支援など別の区分に該当する可能性もあるため、委託元・作業内容・人の雇い方を伝え、労働局や承認された加入団体に確認します。厚生労働省の対象者案内で確認できます。
3. 病気やケガで売上が止まるとき:現金と休業中の所得への備え
自分が休むと売上が止まる人は、生活費と事業の固定費を先に計算。国民健康保険には、会社員の健康保険のような傷病手当金が通常はありません。独自の給付を設けている保険者もあるので、自分の加入先に確認します。文化庁の社会保障制度の説明にも、この違いが整理されています。
預貯金でまかなえる期間を確かめ、不足が大きければ所得補償保険や就業不能保険を比較します。「働けない」の条件、支払いの対象外となる日数、受け取れる期間、対象外の病気は商品ごとに異なります。単に予約が減った場合まで補償する保険ではありません。所得補償保険の仕組みと就業不能保障保険の条件を確認しましょう。
4. 仕事の車で事故を起こしたとき:自動車保険
車で現場を回る人は、仕事で使う実態に契約が合っているか確認。使用目的、運転する人の範囲、対人・対物の補償、車が使えない間の対応を見ます。業務で使う頻度を正確に伝え、変更があれば保険会社に連絡してください。日本損害保険協会の告知・通知事項の説明が参考になります。
5. 治療費や家族の生活が心配なとき:医療保険・生命保険
医療保険は公的医療保険と貯蓄、死亡保障は扶養家族や借入の状況から考えます。医療費には高額療養費制度があるので、まず公的保障を確認します。家族の生活費・教育費などは、遺族年金、家族の収入、預貯金、加入済みの保険で補える分を差し引きます。住宅ローンの団体信用生命保険(所定の死亡などで返済を保障する保険)も含め、重複と不足を確認しましょう。金融庁の公的保険ポータルと生命保険文化センターの必要保障額の考え方が入口になります。
保険を選ぶときの詳しい確認項目は、個人事業主のエアコン屋に必要な保険でまとめています。すでに入っている契約を並べ、足りない部分から見直すと整理しやすくなります。
CHAPTER 02 / 3つの制度の選び方
NISA・iDeCo・小規模企業共済をどう選ぶか
3つを全部使うことが正解とは限りません。まず、生活費と事業資金を手元に残せるか。その次に、いつ使うお金か、課税所得があるか、どの程度の値下がりを受け入れられるかで考えます。
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使う時期を柔軟に決めたいなら、NISAを検討する
NISAで買った商品は売却できます。老後より前に使う可能性があるお金も検討しやすい制度です。投資信託などには値下がりがあり、売却から入金まで日数もかかります。数年以内に必ず使う車の買い替え代や納税資金は、預貯金で分けておく方が予定を立てやすくなります。掛金の所得控除はなく、運用益が非課税になります。
老後まで使わないお金なら、iDeCoを検討する
課税所得があり、原則60歳まで使わずに置いておける資金なら、掛金の所得控除を受けながら老後に備えられます。受取開始年齢は加入期間などでも変わるので、年齢が高くなってから始める場合は特に確認します。選んだ商品の値動きに加え、加入・管理などの手数料と受取時の税金も見てください。
廃業や退職の備えなら、小規模企業共済を検討する
加入資格があり、長く続けられる事業主には、自分の退職金を用意する候補になります。掛金は所得控除の対象で、条件を満たせば契約者貸付も利用できます。受取額は制度の計算によって決まり、任意解約の時期や掛金変更によっては元本割れします。近く事業や働き方が変わる予定なら、受取区分や継続の手続きを先に確認してください。
併用するなら、合計でいくら出ていくかを見る
併用を考えるときは、制度ごとの上限より、毎月の掛金や積立額の合計が大切です。課税所得が少ない年は、iDeCoや共済の掛金控除による税負担の軽減も小さくなります。まず少額で始め、売上、年齢、家族の支出、事業の見通しに合わせて見直す考え方もあります。
iDeCoと共済を一括で受け取る場合などは、受取時期の組み合わせによって税額が変わることがあります。掛金を払うときの節税額だけで決めず、受け取り方まで含めて、必要に応じて税理士や制度の窓口に確認しましょう。
制度の一次資料:金融庁のNISA案内、iDeCo公式案内、共済の受取条件、国税庁の退職金と税金の説明。
NISAとiDeCoは、お金を入れる制度の違いも確認する
NISAは投資の利益にかかる税金を軽くする制度
NISAは、対象となる投資の利益が非課税になる制度です。証券会社でNISA口座を開いただけでは運用は始まらず、その中で何を買うかを自分で選びます。買った商品の値下がりは、NISAでも起こります。
現在の成人向けのつみたて投資枠は年間120万円、非課税保有期間は無期限です。上限いっぱいまで入れる必要はありません。自分が続けられる金額を先に決めます。制度の基本は金融庁のNISA案内を確認してください。
NISA口座で出た損失は、課税口座の利益と相殺したり、翌年以降に繰り越して税金を減らしたりできません。また、投資した金額自体が所得控除になる制度でもありません。損失の扱いは国税庁のNISAの説明に記載されています。
iDeCoは老後に向けた制度で、原則60歳まで引き出せない
iDeCoは、自分で掛金を積み立てて運用する年金制度です。掛金の全額が所得控除の対象になります。所得控除は、税金を計算するもとになる所得から差し引く仕組みです。税負担がどれだけ軽くなるかは、本人の所得などで変わります。
原則として60歳まで引き出せず、加入期間によって受け取りを始められる年齢も変わります。手数料もかかります。課税所得がなければ、掛金の所得控除によるメリットはありません。
個人事業主は、節税額だけを見るより、急に必要になる仕事のお金を残せるかが大事です。NISAとiDeCoは目的や引き出し条件が違います。自分の年齢や資金繰りに合わせて検討してください。iDeCo公式サイトの特徴と注意点、税制優遇・受取年齢のFAQで詳細を確認できます。
CHAPTER 03 / 小規模企業共済
小規模企業共済で、自分の退職金を準備する
個人事業主が将来のお金を考えるなら、小規模企業共済も候補になります。国の機関である中小機構が運営する、廃業や退職後の生活などに備える制度です。毎月の掛金を積み立て、受け取る理由や納付月数に応じて共済金などを受け取ります。制度の概要は中小機構の案内で確認できます。
加入できるかは、主な仕事と働き方で確認する
エアコンクリーニングなどの清掃サービスを主な事業にする場合、サービス業として、加入時に常時使用する従業員が5人以下かを確認します。エアコンの取付工事などが主な事業なら、業種区分の確認も必要です。従業員の数え方には制度上の決まりがあります。
会社に常時雇用され、給与を得ながら副業で清掃をしている人などは加入できません。「個人で仕事をしていれば全員入れる」とは考えず、中小機構の加入資格で、自分の事業形態や働き方を確認してください。
掛金は月1,000円から7万円で、所得控除の対象になる
掛金は月1,000円から7万円まで、500円単位で決められます。加入後の増額や減額も可能です。その年に支払った掛金は、全額が所得控除の対象になります。事業の必要経費に入れるものではありません。
所得控除は、税金を計算するもとになる所得を減らす仕組みです。掛金がそのまま全額戻るわけではなく、税負担がどれだけ軽くなるかは本人の所得などで変わります。課税所得がなければ、掛金の所得控除によるメリットはありません。
年末に申し込む場合は、その年のうちに実際に支払えるかも確認します。前払いする掛金は、1年以内の前納分がその年の控除の対象です。詳しくは掛金と税金の扱いを確認してください。
途中でやめる理由によって、受取額が変わる
個人事業をすべて廃止した場合などの共済金と、自分の都合で途中解約する「任意解約」の解約手当金は、受取額の計算が違います。65歳以上で掛金を180か月以上納めた場合は、仕事を続けたまま老齢給付を請求できます。共済金A・Bは、掛金の納付が6か月未満だと受け取れません。
任意解約は、掛金の納付が20年未満だと、受け取る額が払った掛金の合計を下回ります。12か月未満なら解約手当金はありません。加入期間が20年以上でも、途中で掛金を増減した場合は、掛金の区分ごとの納付月数によって元本割れすることがあります。
「20年たてば、どんな場合でも全額戻る」「廃業で受け取る場合も、20年未満は必ず損をする」という理解は正確ではありません。共済金と解約手当金の条件を分けて確認しましょう。受取時にも税金の扱いがあり、受け取る理由、年齢、一括か分割かなどで変わります。
積み立てを続けながら、事業資金を借りられる仕組みもある
小規模企業共済には、一定の条件を満たすと事業資金などを借りられる「契約者貸付」があります。共済を解約せずに資金を用意できる点は、個人事業主にとって利点です。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、年金資産を借入れの担保にもできないため、資金繰りの面で違いがあります。iDeCoの扱いは加入時の確認事項にも記載されています。
一般貸付の限度額は、納付月数に応じて掛金の7〜9割の範囲で決まり、10万円以上2,000万円以内、5万円単位です。入れたお金の全額を、そのまま引き出せる制度ではありません。2026年10月3日の確認時点では、一般貸付の利率は年1.5%、担保・保証人は不要です。
利用には、4月末・10月末の判定時に、前納分を除いて12か月以上掛金を納め、貸付限度額が10万円以上になっていることなどが必要です。判定結果が使えるのは、4月末の判定なら同年10月1日から、10月末なら翌年4月1日から。加入してすぐに借りられるわけではありません。
借りたお金には返済期限と利息があります。急な車の修理や入金の遅れへの備えとして検討できても、現金の備えを全部なくしてよいということではありません。条件と返済方法は中小機構の契約者貸付の案内で確認してください。
節税額より先に、手元に残すお金を決める
NISAは投資の利益が非課税になる制度、iDeCoは自分で運用する老後の年金、小規模企業共済は廃業や退職などに備える制度です。お金を受け取れる条件が違うので、同じ積立額だけを見て比べないようにします。
エアコン屋なら、閑散期の生活費、納税資金、車や洗浄機の修理代などを先に確保します。そのうえで、長く続けられる掛金を考えてください。節税のために掛金を増やしすぎて、普段の支払いで借入れに頼るようでは、資金繰りが苦しくなります。
CHAPTER 04 / ほかの年金
老後の年金を増やす、ほかの選択肢
小規模企業共済・iDeCo・NISAのほかに、付加年金と国民年金基金もあります。主な対象は、自営業者などの国民年金第1号被保険者と、条件を満たす任意加入者です。国民年金保険料の免除・猶予などの状況によって加入できない場合があるため、資格を確認してください。
少額から年金を上乗せしたい人:付加年金
国民年金保険料に月400円を加える制度です。将来の年金に加わる年額は、200円×付加保険料を納めた月数です。たとえば120か月納めると、上乗せは年2万4,000円になります。この金額には物価に応じた増額の仕組みがありません。日本年金機構の加入・納付条件と付加年金の説明をご覧ください。
終身の年金を上乗せしたい人:国民年金基金
国民年金に上乗せする制度で、65歳から一生受け取る終身年金が基本です。加入後は自分の都合だけで脱退できず、掛金の途中引き出しもできません。老後まで使わずに置けるお金で検討します。対象者と基本的な仕組みは日本年金機構、脱退・給付の条件は国民年金基金連合会で確認できます。
付加年金と国民年金基金は併用できません。iDeCoはそれぞれと併用できますが、掛金の共通上限に注意が必要です。2026年10月3日現在、第1号加入者のiDeCoと国民年金基金の合計上限は月6万8,000円です。付加年金を選ぶ場合も、付加保険料を差し引いてiDeCoの上限を計算します。
制度変更の予定:厚生労働省は、第1号加入者のiDeCoと国民年金基金の共通上限を2026年12月1日から月7万5,000円へ引き上げる予定と案内しています。申込み時点の限度額は、現行制度と改正の施行予定を分けて確認してください。
制度・公式案内の確認日:2026年10月3日。個別商品の補償は、契約の開始日・保険証券・約款・特約によって異なります。
CHAPTER 05 / 税金の具体例
売上と経費から税金の変化を見てみる
小規模企業共済で税金がどれくらい減るかは、売上だけでは決まりません。経費を差し引いた利益、使える控除、支払う掛金で変わります。ここでは、エアコンクリーニングを個人事業として営む人の架空の例で比べます。
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この節でいう「利益」は、売上から税務上の必要経費を引いた、青色申告特別控除前の金額です。税金や生活費を払った後の手取りではありません。小規模企業共済の掛金は経費に入れず、その後の「所得控除」で差し引きます。iDeCoの掛金も所得控除の対象ですが、以下は小規模企業共済だけに掛金を払う例です。NISAの購入額は、この所得控除には入りません。控除の対象は国税庁の説明で確認できます。
試算の前提
- 日本の居住者で、所得はこの事業だけ。配偶者・扶養控除、ほかの所得控除、繰越損失、住宅ローン控除などはありません。
- 青色申告の承認を受け、複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを付けて期限内にe-Taxで申告するなど、65万円の青色申告特別控除の要件を満たすものとします。
- 国民健康保険料・国民年金保険料など、支払った社会保険料はどの例も年60万円と仮定します。比較のための固定額で、売上や利益から実際の保険料を見積もった額ではありません。
- 共済の加入資格を満たし、2026年中に12か月分の掛金を支払う想定です。途中加入なら、その年の控除対象額を実際の支払額に置き換えます。
- 2026年分の所得税等と、その所得に対応する2027年度の住民税所得割を比べます。2026年分の所得税の基礎控除は、下の例1〜3では104万円、例4では67万円です。2026年12月1日施行・2026年分に適用される改正を反映しています。基礎控除の金額と適用時期
以下の「所得税等」は復興特別所得税を含みます。住民税は標準税率10%の所得割だけを計算し、基礎控除43万円と、今回の各例に適用される調整控除2,500円を反映しています。住民税の均等割、森林環境税、自治体独自の上乗せは含みません。記載した合計は、実際に納める税金すべての合計ではありません。
例1 売上400万円 経費200万円で月1万円を払う
利益は200万円。青色申告特別控除後の所得は135万円です。ここから社会保険料60万円と所得税の基礎控除104万円を引くと、掛金を払う前から所得税の課税所得は0円になります。
- 年間掛金:12万円
- 所得税等:0円 → 0円
- 住民税所得割:2万9,500円 → 1万7,500円
- 税負担の減少:年1万2,000円
- 掛金から税負担の減少分を差し引いた額:10万8,000円
この例で減るのは住民税所得割です。所得税がもともと0円なら、掛金を払っても所得税の軽減は増えません。
例2 売上600万円 経費200万円で月3万円を払う
利益は400万円。青色申告特別控除後の所得は335万円です。所得税の課税所得は、掛金を払う前が171万円、年36万円を払った後が135万円になります。
- 年間掛金:36万円
- 所得税等:8万7,200円 → 6万8,900円
- 住民税所得割:22万9,500円 → 19万3,500円
- この2つの合計:31万6,700円 → 26万2,400円
- 税負担の減少:年5万4,300円
- 掛金から税負担の減少分を差し引いた額:30万5,700円
売上800万円・経費400万円でも、利益は同じ400万円です。ほかの前提と掛金が同じなら、今回の税額も同じになります。売上が多い人ほど必ず共済の節税額が大きくなる、という関係ではありません。
この利益400万円の例で、月の掛金だけを変えると、次のようになります。
- 月1万円:年12万円を払い、税負担は約1万8,100円減少。税額合計は29万8,600円、掛金から減少分を差し引くと10万1,900円です。
- 月3万円:年36万円を払い、税負担は約5万4,300円減少。税額合計は26万2,400円、差し引いた額は30万5,700円です。
- 月5万円:年60万円を払い、税負担は約9万600円減少。税額合計は22万6,100円、差し引いた額は50万9,400円です。
掛金を増やすと税負担の軽減も大きくなりますが、仕事や生活に使える手元資金はその分減ります。節税額の大きさだけで掛金を決めないようにしましょう。
例3 売上700万円 経費250万円で月3万円を払う
利益は450万円。所得税の課税所得は、掛金を払う前が221万円、年36万円を払った後が185万円です。
- 年間掛金:36万円
- 所得税等:12万6,000円 → 9万4,400円
- 住民税所得割:27万9,500円 → 24万3,500円
- この2つの合計:40万5,500円 → 33万7,900円
- 税負担の減少:年6万7,600円
- 掛金から税負担の減少分を差し引いた額:29万2,400円
所得税は、所得が増えた部分に段階的に高い税率がかかります。この例は195万円の境目をまたぐため、36万円のうち26万円分は所得税率10%、残り10万円分は5%の部分から減ります。掛金全額に、掛金を払う前の税率10%を掛けると、軽減額を多く見積もってしまいます。上の金額では、復興特別所得税と端数処理も反映しています。
例4 売上1,000万円 経費400万円で月5万円を払う
利益は600万円。青色申告特別控除後の所得は535万円なので、この例の所得税の基礎控除は67万円です。所得税の課税所得は、掛金を払う前が408万円、年60万円を払った後が348万円になります。
- 年間掛金:60万円
- 所得税等:39万6,600円 → 27万4,100円
- 住民税所得割:42万9,500円 → 36万9,500円
- この2つの合計:82万6,100円 → 64万3,600円
- 税負担の減少:年18万2,500円
- 掛金から税負担の減少分を差し引いた額:41万7,500円
今回の掛金は、所得税率20%がかかる部分から全額差し引かれるため、例2より税負担の減少割合が大きくなります。基礎控除を決める「合計所得金額」は、掛金などの所得控除を差し引く前で判定します。掛金を払って535万円から475万円になったとして、基礎控除も104万円に増やす計算はできません。
税金が減る時期と手元資金を分けて考える
「掛金から税負担の減少分を差し引いた額」は、税金の軽減を織り込んだ資金負担の目安です。掛金を払うときには全額のお金が必要で、軽減分がその場で戻るわけではありません。2026年中の掛金は2026年分の所得税と、原則2027年度の住民税に反映されます。将来の受取時の税金、途中解約による元本割れ、借入れの利息などもこの差額には入っていません。
消費税・個人事業税・国民健康保険料などの軽減額も、この試算には含めていません。共済の所得控除を、これらの負担も同じ割合で減るものとして足し合わせないでください。実際の判断では、確定申告書、家族の状況、ほかの控除、資金繰りを確認し、必要に応じて税理士に相談します。
計算方法は、売上-必要経費-青色申告特別控除で所得を出し、基礎控除・社会保険料控除・掛金控除を差し引いて課税所得を求めています。所得税は国税庁の累進税率を適用し、復興特別所得税2.1%を加算。源泉徴収・予定納税はないものとし、国税庁の計算例に沿って申告納税額の100円未満を切り捨てています。課税所得は1,000円未満切り捨てです。住民税は長野市の2027年度控除の説明と千葉市の標準税率・調整控除の説明を参照しています。以上は2026年10月3日に確認した制度による一般的な試算です。
CHAPTER 06 / 借入れとiDeCo
共済から借りてiDeCoに回す方法は、得になるのか
小規模企業共済とiDeCoは併用でき、実際に支払った掛金はそれぞれ所得控除の対象です。共済掛金を払った後に契約者貸付を使っても、通常の借入れは掛金の払戻しではありません。借入金や返済額そのものに新しい所得控除がつく仕組みではなく、以前払った共済掛金を借入年にもう一度控除することもできません。対象となる掛金は国税庁の案内で確認できます。
iDeCoへの積立を増やせば、税負担を減らせる可能性があります。先に確認したいのが借入金の使い道です。中小機構の公開説明では、一般貸付をiDeCo掛金に使うことが認められるか確認できません。対象は事業資金、事業関連資金、生活資金です。実行を考える場合は、共済相談室と借入窓口に目的を具体的に伝えて確認する必要があります。一般貸付の使途と条件
使途が認められると仮定した、60万円の計算例
ここからは仕組みを理解するための仮定の計算です。この方法の実行を勧める試算ではありません。共済の貸付資格・限度額があり、2026年中にiDeCo掛金を月5万円ずつ12回、合計60万円支払った独立した例です。今から年内に12回払える、という意味ではありません。共済掛金など、ほかの所得控除をすべて引いた後でも、iDeCoの控除前後が所得税10%の税率帯に収まり、住宅ローン控除などの税額控除はないものとします。
- 60万円を1年間、年1.5%で借りる利息:9,000円
- 利息は前払いなので、受け取るお金:59万1,000円。60万円を拠出するには9,000円を別に用意
- 書面契約の収入印紙:1,000円
- 60万円の控除による税負担の軽減:約12万1,260円
- 上の軽減額から利息と印紙を差し引いた比較額:約11万1,260円
軽減額は、控除する60万円の全額が所得税率10%の範囲に収まり、住民税所得割10%、復興特別所得税2.1%を含める仮定です。前の節の個別ケースと違い、税額の端数処理は含めていません。ここからiDeCoの手数料、運用費用、必要書類の取得費などがかかります。先に支払った共済掛金の節税額は、この約12万1,260円には含めていません。将来の受取時の税金と運用損益も別です。利息の扱いは貸付金の返済案内、印紙代は一般貸付の手続きを確認しています。
返すお金を、別に残しておけるか
1年後には元金60万円を返す必要があります。iDeCoのお金は原則60歳まで引き出せないので、近い将来の返済には使えません。借換えにも窓口での手続きと利息の支払いが必要です。同じ借金を借り換えるだけで、毎年新しい掛金控除が増えるわけでもありません。一般貸付の借換え条件
課税所得が少なければ税負担の軽減も小さくなります。清掃道具や車の修理代、閑散期の生活費、納税資金を確保し、返済まで含めて考えたい方法です。借りずに同じ額をiDeCoに拠出しても、掛金控除は同じです。手元に余裕があるなら、借入利息や返済の負担を増やさずに積み立てる方法から比較してください。
CHAPTER 07 / 積立と暴落のリスク
毎月少しずつ積み立てることに意味がある
積立投資は、例えば毎月5,000円や1万円など、決めた金額を継続して投資する方法です。ここでの金額は説明用で、誰にでも合う目安ではありません。
忙しい中で、毎回「今日は買い時か」を判断するのは大変です。金額と時期を決めておけば、将来のためのお金を用意する習慣にできます。金融庁も、資産形成の基本として長期・積立・分散投資を紹介しています。
投資信託は、多くの人のお金をまとめて、株式や債券などに投資する商品です。その中には、幅広い企業にまとめて投資できるものがあります。株式への長期投資では、企業の成長や利益の還元を取り込むことを目指します。利益を受け取らず運用に回していけば、利益も次の運用に加わります。これが「複利」です。
毎年同じように増えるわけではありません。長く続けても損失が出る可能性は残ります。積み立ては、買う時期を分けながら資産をつくっていく方法として考えましょう。
下がったときに多く買える仕組み
仕組みを単純にするため、架空の商品を1万円ずつ買う例で考えます。
- 最初は1個1万円。1万円で1個買います。
- 次は1個5,000円。1万円で2個買います。
- 使ったお金は合計2万円、持っている数は3個。平均すると1個あたり約6,667円で買えたことになります。
この状態で価格が7,000円になれば、3個で2万1,000円です。最初の1万円まで価格が戻らなくても、合計の購入額を上回ります。
価格が5,000円のままなら、3個で1万5,000円。まだ5,000円の損失です。さらに下がれば損失も増えます。同じ金額で安いときに多く買えることと、必ず利益が出ることは別です。この例は仕組みの説明で、手数料や税金を含みません。
ずっと上がる相場なら、早い時期にまとめて投資した方が増える場合もあります。積立投資が一括投資を必ず上回るわけではありません。毎月入ってくる収入の一部を、無理なく将来に回せるところに使いやすさがあります。
全世界株式でも大きく下がる
過去には、高値から約65%下がった時期がある
全世界の株式の動きを表す指標の一つに「MSCI ACWI」があります。指標とは、市場全体の値動きを見るためのものさしです。
MSCIの公式資料(2026年8月末時点、円建て・配当込み)では、2007年7月13日の高値から2009年3月9日の安値まで、64.82%下落しています。これは1年間の下落率ではなく、高値から安値までの下落率です。
100万円の資産が同じ割合で下がったと考えると、約35万円になる大きさです。世界中の企業に分けても、株式市場全体が下がるリスクは残ります。過去の最大下落率が、将来の下落の限界になるわけでもありません。
そのときに車の修理代や生活費が必要になると、値下がりした状態で売らざるを得なくなるかもしれません。投資の前に現金を確保する理由は、ここにもあります。
海外資産には為替の影響もある
海外の株式に投資する商品は、株価に加えて円と外国通貨の交換比率にも影響されます。これを「為替リスク」といいます。為替の影響を抑える仕組みである「為替ヘッジ」を行わない場合、ほかの条件が同じなら、円高は円で見た資産価値の下押し要因になります。
円で買う投資信託でも、中身が海外の資産なら為替の影響を受けることがあります。商品の説明書で、投資先と為替ヘッジの有無を確認してください。外国資産を組み入れる投資信託のリスクは、日本証券業協会の説明でも確認できます。
必要な日に、元に戻っている保証はない
「長期で持てば大丈夫」と言われても、自分がお金を使う日までに回復するかは分かりません。投資先によっては、元の値段に戻らないこともあります。
数年後の車の買い替えなど、使う時期と金額が決まっているお金を、株式の値上がり頼みにするのは避けたいところです。将来使うために運用しているお金も、使う時期が近づいたら、現金で確保する分を見直していきます。
2008年の暴落を経験した積み立ては、何年で戻ったのか
過去の例として、世界金融危機の前から世界株式に投資していたケースを見ます。J.P.モルガンの「Guide to the Markets」2026年第3四半期版51ページに、2007年10月末からの値動きと、毎月1万円を積み立てた試算が載っています。
図は横にスクロールできます。
この資料は、世界株式の指数を円換算し、税引前の配当を再投資したものとして計算しています。日々の値動きではなく、月末の値で比較しています。
最初にまとめて買った場合は、約6年2か月
2007年10月末の指数を100とすると、大きく下落した後、その水準を回復したのは2013年12月です。開始から約6年2か月かかっています。
指数と同じ値動きで、配当も再投資できたと仮定すれば、最初にまとめて投資したお金が元の水準に戻るまでの目安になります。先ほどの64.82%の下落は日付単位の高値・安値、この6年2か月は2007年10月末を起点にした月末単位の比較です。測り方が違うので、起点を混ぜないようにします。
毎月1万円を積み立てると、途中の戻り方が変わる
同じ資料の積立投資のグラフでは、下落を経験した後、2009年12月ごろ、開始から約2年2か月後に、資産の評価額がそれまでに入れたお金の合計を上回る場面があります。
ここだけ見て「2年ほどで安心」と受け取ると、実際の値動きを見落とします。翌2010年1月ごろには再び元本を下回り、その後も上回ったり下回ったりしています。
2012年8月ごろ、開始から約4年10か月後から、グラフの終点である2013年12月までは、各月末の評価額が積立元本を上回っています。ここで挙げた、積立元本を上回る・下回る時期は、資料のグラフから読み取った目安です。将来の回復時期を予測できる数字ではありません。
2013年12月末の数値として、資料には次の結果が明記されています。
- 毎月の積立額:1万円
- 積立回数:75回
- 積み立てた元本の合計:75万円
- その時点の資産価値:約126万円
下がっている時期にも買い続けたことで、後から買った分の購入価格が下がり、最初の高値に戻る前に積立全体が元本を上回る場面が生まれた、という例です。
一括投資は最初にお金を入れ、積立投資は後から追加しています。投じた金額も、運用した期間も違います。回復までの年数だけで、どちらが必ず得かを決める比較には使えません。
この試算には手数料などの費用が入っておらず、実際の投資信託の運用実績ではありません。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の設定は2018年10月31日なので、2007年からその商品を買えたという話でもありません。運用会社の設定日を記した資料でも確認できます。
この例から考えたいのは、下落に耐えられる金額で続けることの意味です。次の暴落も同じ年数で戻るとは限りません。過去の好調な平均リターンを、そのまま将来の利回りとして予定に入れるのも避けましょう。
まずは、無理なく続けられる金額を決める
最初にすることは、生活費、事業資金、税金、休業への備えを書き出すことです。そのうえで、長く使わないお金を毎月いくら回せるかを考えます。
金額が決まったら、投資先が広く分散されているか、値下がりをどこまで受け入れられるか、持ち続ける費用はいくらかを確認します。株式に100%投資する商品の値動きが負担なら、投資する金額を小さくする、現金の割合を増やすなど、自分に合う形に調整できます。
積立開始後は、残高不足で買い付けが止まっていないか、生活や仕事のお金が足りているか、口座に不審な操作がないかを確認します。売上が落ちた月に、無理に同じ金額を出す必要はありません。減額や一時停止が必要なら、制度ごとの手続きも確認しましょう。
現場の仕事を大事にしながら、将来の準備も少しずつ進める。リスクを知って、無理のない金額で積み立てる。その習慣をつくっておくことには意味があります。
制度・サービスの確認日:2026年10月3日。本記事は一般的な情報提供を目的としています。特定の商品の購入や将来の利益を保証するものではありません。商品ごとのリスク、手数料、税金の扱いを公式資料で確認し、ご自身の状況に合わせて判断してください。


